絶体絶命の聖女候補、幼女薬師になってもふもふと聖騎士団をお助けします!

 その声に反応するように魔獣がルイーナを視界に捉える。
 魔獣は足が速い。標的を変えた魔獣が近づいてくるのは一瞬のことだ。ザグリーンが慌ててその後ろを追いかけるのが、スローモーションのように見えた。

「逃げろ、バカ!」

 咄嗟に剣を抜き、ルイーナを力の限り突き飛ばす。
 構えた剣が魔獣の肉を裂く感覚が確かにしたが、同時に肩に鋭い痛みが走った。

「イラリオ!」

 目を見開いたヴィラム殿下が、こちらに手を伸ばして叫ぶのが聞こえる。

(これは、死ぬかもな……)

 噛まれたままの部分が燃えるように痛い。
 傷を負ったままでは分が悪いと判断したのか、魔獣は俺を咥えたまま走り出す。

(エリー、俺が面倒見るって言ったのにまたひとりぼっちになっちまうな……)

 朦朧とする意識の中で最初に脳裏に浮かんだのは「イラリオさん!」と嬉しそうに寄ってくる、エリーの笑顔だった。