(あっ、特製絆創膏も作らないと)

 空になった在庫箱を見て、私は絆創膏作りの材料を準備する。今朝、イラリオさんに『たくさん必要になるかもしれないから、今あるものは全部ほしい』と言われて聖騎士団に全て納品してしまったのだ。なんでも、今日はアメイリの森に聖獣や魔獣の生息状況の確認に行くのだとか。

(聖獣はいいんだけど、魔獣の調査って大丈夫なのかな……)

 イラリオさんやザグリーンに聞いた話では、聖獣が瘴気におかされて魔獣に変化すると凶暴性が増し、何もしていない無害の相手であろうと突然攻撃を仕掛けてくるのだとか。ザグリーンが怪我をしていたあの日も、魔獣と遭遇して戦った結果、怪我をしたらしい。

(何もないといいのだけど……)

 なんだか胸騒ぎが止まらない。
 私はそんな嫌な予感を振り払うように、近くにいたイリスを抱き上げる。イリスのもふもふに触れたら、少しだけ気持ちが落ち着く。

「イリス。イラリオさん達は大丈夫かな?」

 カミラさんには聞こえないような小さな声で、イリスに尋ねる。

「心配なら、見に行ってきてあげるにゃ。何かあったら知らせるにゃ」
「本当? そうしてくれると助かるな」

 イリスはするりと私の腕から地面に降りると、ふわりと姿を消した。

(ザグリーンもいるし、イリスも見に行ってくれたし、これで大丈夫だよね?)

 私は気を取り直すと、用意した材料を並べて黙々と特製絆創膏作りを始めたのだった。