ブルノ大司教があんな状態になるほど疲弊してしまったのは、聖女の作る結界がしっかりと機能していないということだ。

(聖協会に宛てた手紙とは別に、ヴィラム殿下にもこれまでの事情を伝える手紙を書いたほうがいいな)

 聖協会とは、アリスベン各地にある大聖堂や聖職者をとりまとめている政治機関だ。聖女光臨の儀も聖協会が中心となって進めた。

 こんな状態が続けば、きっとよくないことが起こる。
 もはやその予感は、確信に近くなりつつあった。

 俺は何をどう伝えるのがよいかと考えを整理しながら、インクにペンを浸したのだった。