「これは、新たな聖女様が慣れていないせいなのか。あるいは──」

 その先に続く言葉は発せられることなく、ブルノ大司教は黙り込んだ。

    ◆ ◆ ◆

「ブルノ大司教の意識が戻ってよかったよ。またしてもエリーのお手柄だな」

 聖騎士団の事務所からの帰り道。俺はしみじみとエリーに言う。

 ブルノ大司教が倒れたと聞いたとき、そして、医師もお手上げで薬も効かないと効いたときは本当にひやりとした。今回、アリエッタの活躍には本当に大感謝だ。

 アリエッタは俺の前にちょこんと跨がり、馬の進行方向を見つめていた。茶色いふわふわとした髪に覆われた頭をぽんぽんと撫でる。アリエッタはくるりと上半身をひねってこちらを向いた。

「うん。みんなに協力してもらったの。リーンやイリスや、ガーネやベラ、あとは──」

 はにかみながらも、アリエッタは指を順番に折る。今日手伝ってくれたという聖獣や精霊の名前を一つひとつあげていた。

「みんなが助けてくれなかったら、きっとブルノ様を助けることはできなかったよ」
「そうか。みんなにエリーのブルノ様を助けたいっていう気持ちが通じたんだな」
「うん」

 エリーは嬉しそうに笑うと、大きく手を振る。

「みんなありがとう!」
[どういたしましてー]