リアはちょっぴりがっかりしたような顔をする。

「人間の姿をした聖獣なんているの?」
[いるって聞いたことあるよ。友達が見たことがあるって]

 人間の姿をした聖獣? そんなの、一度も聞いたことがないけれど……?
 ザグリーンのほうを見ると、目が合ったザグリーンは首を傾げる。

「なんだ?」
「人間の姿をした聖獣なんているの?」
「人間の姿をした聖獣はいない。聖獣とは強い神聖力を持った獣だ。強い神聖力を持った人間は司祭や聖女だろう」
「あ、そっか」

 言われてみればそうだ。ブルノ大司教も神聖力が強いけれど、聖獣ではなく人間だ。

「だが、人間に姿を変えられる聖獣はいる」

 ザグリーンが付け加えるように言った情報に、私ははっとした。
 人間の姿になれる聖獣がいるという伝説は聞いたことがある。けれど、実物を見たという話は聞いたことがない。だから、私はその伝説は作り話の可能性が高いと思っていた。

 聖獣が人間に姿を変えられる?

「も、もしかして、リーンも……?」

 私は恐る恐るザグリーンに尋ねる。

「いや、我は変えられぬ。変えられるのは、特に神聖力の強い最上位の聖獣のみだ」