私はトンッと胸に手を当てて、そう言った。それさえ探し出せれば、ブルノ大司教を助けることができるかもしれないのだ。

「しかし、アメイリの森か。最近、急に魔獣が多くなったから心配だな。俺も行くか……」

 イラリオさんが悩むように腕を組む。

「最近ではない。昔から、結界が弱くなると魔獣は増えた」

 ザグリーンがイラリオさんに言う。

「どういうことだ?」
「我ら聖獣は、アメイリの森に漂う神聖力を糧に生きている。結界が弱くなると瘴気が交じり、魔獣と化すのだ」
「えっ! それってつまり、魔獣と聖獣は同じものだってことか?」

 イラリオさんが驚いたように目を見開く。

「その通りだ。ただ、魔獣と呼ばれる状態になった元聖獣は基本的に元に戻すことはできない」
「なんてこった……」

 イラリオさんは知らなかった事実に頭を抱える。つまり、最近魔獣が多いと感じていたのは結界が弱くなり聖獣達が糧とする神聖力に汚れが交じり、魔獣化していたということなのだ。

 その話を聞きながら、私は気になることがあった。

「ねえ、リーン。『基本的に戻すことはできない』っていうことは、戻す方法もあるってことね?」

 これまで、人を襲う可能性がある上に瘴気をまき散らす魔獣は、全て聖騎士団によって殺処分されていたはずだ。けれど、実は戻す方法がある?

「大聖女の祝福があれば」
「大聖女……? 何それ?」