「そうだよ。これを使って体中を梳けば、毛並みがふっさふさになっちゃうんだから!」

 私は事前に用意したブラシをずいっとリーンの顔に突き付けるように見せる。ロベルトさんに教えてもらって、昼間に買ってきたのだ。

「ねえねえ、いいでしょ?」

 機嫌を窺うようにザクリーンを見つめると、ザクリーンはぐっと言葉に詰まったように一瞬黙る。

「好きにしろ」
「やったー。リーン、大好き」

 私はザグリーンにぎゅっと抱きつき、柔らかな毛並みに体を埋める。
 ブラッシングする前だけどふわふわー。これがもっとふわふわになるなんて、期待しかない。

「じゃあ、始めまーす」

 ストンと足音もなく、イリスも本棚の上から下りてきた。

「イリスもやってあげるね。順番ね」

 ブラッシングをやったことはないけれど、ロベルトさんから大体のやり方は教わった。痛くしないように、力を加減しながらブラシで毛並みを梳いてゆく。