「ねぇ蓮くん。呉ちゃん,あれ絶対外堀埋められていってるの気付いてないけど良いの?」



私は呉ちゃんが沙羅ちゃん達とわちゃわちゃしている様子を遠目で眺めていた蓮くんに話し掛けた。

2人だけで話したことなんてなかったし,ちょっと暇だったから。



「ふふっ。呉羽のそういうところも可愛いですよね」



蓮くんは呉ちゃんの事になると,本当に雰囲気が変わる。

私が一方的に有名な蓮くんを知ってたときはこんな感じじゃなかったもん。

誰とも公平に,一歩引いた感じがした。

それが……こんな表情をする。



「あー。呉ちゃんの言ってた色気ってこういうことかぁ。当てられる前に私向こう行ってるね?」




ーその時,そんな会話がされていたと呉羽が知るのはもっと先の事。