「呉羽? 僕が初めて,なんだ?」
……薄々気付いてたけど,やっぱりこの子はちょっとSが入ってる。
「僕もね? ふふっ。祖父母といとこを除いた異性の家に上がるのは初めてだよ?」
赤面する私と彼の間に,それ以上の会話はなかった。
「ねぇ呉羽。僕今日暇だからもう少しここにいてもいい?」
彼がそんなことを言ったのは朝食を食べ終えてすぐだった。
「別に良いけど……」
私も1日家を空けるつもりが無かったからなんの抵抗もなく了承する。
「そっか! じゃあテレビ見ない?」
「えっ? 私も?」
てっきり1人で過ごすものだと……
ソファーに座る彼は,驚く私をクスクスと笑う。
「当たり前でしょ? 呉羽が一緒じゃないと帰っても変わんないんだから」
「そっか」
私は一緒にいたいと言われた気がして素っ気なくそう言うと,照れを隠しながらおとなしく隣に座った。
「ふふっ。可愛い」
彼はそんな私を見て微笑んだ。
「あのさ。私から言い出しておいてなんだけど,大丈夫? 誤解されたりしない? その,彼女とか好きな人に」
「え? そんな人いないよ?」
「そ,う,なんだ……」
いない……んだ。
……………
「いや,だからってどうしようとか無いから!! 君も安心して,食堂と同じ感覚で来て帰ってくれれば良いからね!?」
一瞬でも意味不明な沈黙をしてしまった自分と彼に言い訳するように捲し立てる。
そんな私を見て,彼は妖しく笑った。
「ねぇ呉羽。僕は別に,呉羽なら僕をどうこうしようって思ってくれても構わないよ?」
え? どうゆうこと? ちょっと誰か……お願いだから説明して……
1人テンパる私を他所に,彼は私の髪を人差し指でくるくると弄る。
「それに,さっきから呉羽は僕の事,ねぇとかあの,とか,君とか貴方ってよぶよね? 昨日も言ったけど,僕の事は蓮って呼んで?」
まだ状況を理解出来て無い私に,彼は更に距離をつめてきた。
今だかつて,幼少期を含めて異性とこんなにキョリが近かったことなどあっただろうか?
漫画だったら私は今,目をぐるぐるとまわしている所だ。



