「……そっちこそ、昔よりもっとかっこよくなったよね」

「ふっ、知ってる」

「うるさい。調子に乗るな」

「はー?自分で言ったくせに〜」


ニヤッと笑う口元からのぞく尖った白い八重歯。


笑って細くなった片方の目元にある小さなほくろ。


それらは昔から何一つ変わってないのに、いい感じにセットされた髪や爽やかに香る匂いは彼が大人になった明らかな証拠で。


「……そんだけかっこよかったら女の子たちも放っておかないんでしょーね」


彼に群がる女の子たちを想像すると、心がザワついて面白くない。
不機嫌さを隠そうともせずに敬語で言葉を投げかけた。


すると、


「それを言うなら先輩だって。可愛いんだから彼氏がいるんじゃないの?」

「……いるわけないじゃん。バカ」


またそうやって私のことを褒めるから。


私の心は喜んで、期待して。
でも、自分から踏み出す勇気はなくて。


平然と"彼氏がいるのか"なんて聞かれるのも、地味に心が痛くて。


それを無意味に何回も繰り返して、私たちの関係は元先輩と後輩のまま。


ずっと、なにも変わらないまま。