「────先輩、なんか可愛くなったね」


およそ五年ぶりに再会した後輩にかけられた第一声はそんな曖昧な褒め言葉。


じっと真っ黒な瞳を向け、私の目を見つめながら話すところは昔と変わってない。


……ほんとに可愛いって思ってたら、目を逸らすなりなんなり、もう少し動揺をしてもいいと思うの。


それがないのはあんまり彼の好みに刺さってないということか。
素直なタイプだからお世辞でないことはわかるけども、なんとなく負けた気分。


つい、意地を張りたくなってしまう。


「まぁ、都会に染まったらこうなるのも普通だよね」

「はい、すーぐ調子に乗る」

「え、なに?可愛いんじゃないの?」

「うん、可愛い」


私が冗談めかして言ってみてもマジトーンで返してくるから、ドキッと心臓が大きく音を立てる。


こういうところも昔から変わらない。


じゃれ合いみたいな言い合いをする中に"可愛い"とか"好き"とか、そんな言葉をさらりと混ぜてくる。


距離感がバグってる彼にとってそれらの言葉には深い意味なんてないのに。


私はどうしようもないほどに彼の言葉に揺さぶられてしまうんだ。