何時もなら絶対にそんな真似をしない彼女に誘われてこの祭りに来た。
それも不自然だけど、今だって限られた時間を無理矢理楽しもうとしているみたいな焦りが見える。
見てられないと声をかけると、悲しみに溢れた顔の彼女が振り返った。
「ねぇ。記念に写真とろっか。後であんたにも送ったげる」
訳が分からない。
こいつは絶対に自分からそんなこと言わない。
俺が彼女のスマホを預かり、上手く写るように試行錯誤しているとふいに彼女がスマホに触れた。
彼女をスマホ越しに見る。
す、き、
「はいっチーズ」
パシャリ
画面には驚いている俺と、満面の笑みの彼女。
「ありがとね」
どんな意味が込められてるのか、分からなかった。
スマホを引ったくるようにして、彼女は人混みに消えた。
そして……何処かに引っ越していった。
通知 一枚の写真が送られました。
『夢だったの、好きな人とのツーショット』
絶対に、捕まえに行ってやる。