3,2,1…
「明けまして…」
隣にいる背の高い義兄を見上げて,私の言葉はその人に飲み込まれた。
…比喩でも何でもなく。
「なっなに…を…」
「ははっ顔赤いんですけど」
誰のせいだと…!
口をパクパクさせても,そこから音は出ない。
私が妹だと頑張って思い込もうとしてるのに,この男はすぐ惑わそうとする。
「あぁ。正月だって? うん,おめでとう。妹ちゃん?」
「……おめでとうお兄ちゃん」
妹なわけないだろ。
そんな視線から逃れて,私は言い返す。
「へぇ,そうゆう感じ?」
少しイラッとした顔をして兄は私に近づく。
私は,動けなかった。
急だったから,それだけ。
私達の気持ちはきっと一緒。
でも私は何一つ捨てることが出来ないから,私達は兄妹。
「今年は手加減しないから。神頼みもしてきたしね」
バカじゃないの。
揺らぎそうだ。
私が,余裕と意地っ張りがなくなるくらい心乱された時,それが私達の始まり。