『ヒーロー目線』

どんな時も泣いてうずくまるしかなかった僕の手を

『しょうがないなぁー』

そう言って,君はいつだって誇らしげにひいた。
憧れから始まって,それがいつ恋に変わったのかなんて,もう覚えてない。

「待ってよ~」

でもそれは確かに恋で,一秒でも君の心に居座りたくて,僕はいつからか君を追いかけるようになった。

「なんで逃げるの?」

「全っ然可愛くないっ!!」

少し置いて,突然脈絡のないことを言う君に,僕は微笑む。
いつまでも小さな男の子ではないと分かってほしくて。
あわよくば意識してほしくて。
そして結局,絶対に逃がす気はなくて。

「君は可愛いよ。だから,ねぇ,早く僕に堕ちてよ」

僕はまた微笑んだ。
君への愛しさを込めて。
日々変わる君の反応と表情に,期待をもって。
今この一瞬。
僕しかうつさないその瞳と,赤く染まった頬に,僕は少しの優越感と幸せに大きく包まれた。