『ヒロイン目線』

いつも泣いてうずくまっていた彼。
私は,そんな年下の情けない彼の手を

『しょうがないなぁー』

なんて,小さな頃はおねぇさん気分でひいていた。
それが今や……どうだ。

「待ってよ~」

手をひくどころか逆に追いかけられる始末。

「なんで逃げるの?」

スペックの高い彼は運動神経も良い。
凡人を極めている私はすぐに捕まった。
コテンっと可愛らしく首をかしげる彼は,何て言うか……昔と比べて……

「全っ然可愛くないっ!!」

まず纏う空気が全く違う。
ニコニコと笑うその顔も,暗に

『逃がさないよ?』

そう言っているようにしか思えない。
時折男を見せるようになった彼。
その変化に私の心が追い付かない。
いつだって揺れている。
このままじゃ……

「君は可愛いよ。だから,ねぇ,早く僕に堕ちてよ」

私の目は,彼の妖しく細められた瞳にひどく惹き付けられた。