「真っ赤だな-真っ赤だなぁ-♪」

「お前ホントそれ好きだな」

幼なじみ兼彼女である彼女は,毎年この季節になると良くこの歌を歌う。

「うん。お母さんが良く歌ってくれたもの。これ以上記憶が薄れないように。」

彼女の母親は,秋の良く似合う儚げな女性だったと俺も良く覚えている。

『真っ赤だな 真っ赤だな~♪』

もう,記憶が薄れる程前に亡くなった彼女の母親。

「……来て」

俺は有無を言わさず彼女の手を引いた。

『つたの葉っぱが真っ赤だな~♪』

歩いていくと良く開けた丘に到着する。

「ずっと連れて来たかった」

目の前には真っ赤なもみじと沈まんとする夕日。

『もみじの葉っぱも真っ赤だな~♪
沈む夕日に照らされて~♪』

「卒業して,自立できるようになったら……そしたら,結婚してください」

『真っ赤なほっぺたの君と僕~♪』

「は,はい……」

『真っ赤な秋に囲まれている~♪』