物置と化していて、滅多に人の来ない、とある空き教室。

現在そんな場所にいるのは、私と、彼だけ。

今は2人とも休憩時間。

廊下からは喧騒が聞こえる。

「疲れたね」

隣で彼は呟く。

その顔には、発言通りの疲れがにじんでいた。

「そうだね」

私達のクラスは盛況で、私も彼と同様である。

きゅっと彼の手を掴むと、彼は照れたような顔をして私と顔を合わせた。

そしてこつんっと、しっかり配慮された形でおでこが合わせられる。

顔にかかる彼の息は、少しあつい。

未だに私になれていない彼のほでった頬と、熱く濡れた瞳に、私の胸もトキンと鳴る。

「まずはここまで、お疲れ様」

彼は私を優しく引き寄せると、軽いキスを落とした。

これは、文化祭という、普段とはひと味違った空気のなかで紡がれた、数々のドラマの内の1つのお話。