「……だる」
何が楽しいのか分からない体育祭。
憂鬱が過ぎて,せめて自分の出番までふけようとここまで移動し,壁にもたれた。
少し暑いくらいの日を浴びて,俺は目を閉じる。
パタパタと足音が聞こえて,片目だけ適当に開くと,そこには俺の彼女がいた。
「なに」
「あのっこれ……」
性格上ぶっきらぼうな対応にも気にせず,彼女がモジモジと差し出してきたのは,
「ハチマキ?」
理解できずに,俺は素直に首をかしげる。
「ちょっと,憧れがあって……交換してくれないかなぁ?」
おずおずと話す彼女には,愛しさしか感じない。
「あっ休憩の邪魔しちゃってごめんね。リレー応援してるから頑張ってね!」
ハチマキを受け取り,俺のだったそれを渡すと,彼女ははにかみながら来た道を引き返そうとした。
俺はそれを引き留めて,彼女をぎゅっと抱き締める。
「あー」
やっぱ,あんま悪くないかも。
暑さからか,頬に熱を感じてそう思った。