とある土曜日の夕方、彼氏が公園にやってきた。
休日なのにスーツに身を包み、いつもより決まっている髪型を見て、僕は何となく察していた。

何度も腕時計を確認しながらソワソワする彼氏の姿に、彼女と会えなくなる日は近いのだろうかと思った。

彼女が来た。
彼女もいつもよりもお洒落な姿をしていた。
とても素敵だった。
思わず見惚れてしまった。
彼女は先に彼氏が来ていた事に驚きながらも嬉しそうだった。
2人は手を繋いで歩いて公園を出ようとした。

その時、彼氏のポケットから着信音が聞こえてきた。
どうやら仕事のトラブルらしい。
電話に出た後、彼は彼女に謝り、「1時間で戻るから!」と公園を飛び出した。

彼女はいつものようにベンチに座って小説を読み始めた。

1時間過ぎても彼は戻ってこなかった。

僕は知っている。

彼女はいつも、待ち合わせ時間を過ぎる彼氏を1時間は待っている。

でも、1時間待っても来なかった場合、諦めて帰っていく。

だから今日もきっと、あと1時間は待っているのだろう。

僕は彼女を見つめていた。