「ほらこっち」
……えっ。
ガシッと手首を掴まれ、逆方向に進んでいく。
えっ、えっ???
み、道が違うっ……!
手を振り払おうとしたが、思った以上に力が強くてそれができない。
こ、怖いっ……誰かっ……天王院さんっ……。
―――助けてっ……!
ギュッと目を瞑ったその時。
「―――結愛っ!!」
その声に名前を呼ばれて、私は一瞬にして涙が溢れた。
天王院、さんっ……。
安心してしまった、天王院さんが来てくれたから。
どうして……来てくれたの……?
「……死ね」
天王院さんの小さな声が聞こえたと同時に、1人の男の人が天王院さんに蹴られた。
そこまで本気には見えなかったけど、蹴られた本人はその場に倒れて動けなくなっている。
は、やいっ……強いっ……。
一瞬で2人の男性を倒してしまった天王院さんに、思わず拍手したくなった。
走り去っていく男性の背中を見送って、私は天王院さんにガバッと頭を下げる。
「ご迷惑をおかけして、申し訳ございませんでしたっ……!」
呆れられた、かな……。
そんな私の心配は、どうやら不要のようで。
上から降ってきた声は、笑い声だった。


