だけど。

南條くんを好きだったのは本当。

好きだったからこそ、南條くんの本当に好きな女の子の存在を気付けた。

だから私は、琴音ちゃんのために身を引いたんじゃない。

好きな人たちには笑っていてほしいから。

それに何より、自分が笑っていたいから。

限りある時間を大切にしたいから。


だから。



「幸せになってよね! 琴音ちゃん!」

「美羽……」



半泣きの琴音ちゃん。

琴音ちゃんは泣き顔より笑顔が似合う。

だから、ちょっとだけ意地悪しようかな。



「琴音ちゃん、南條くんのこと”恭介”って呼ぶことにしたんだ?」

「ちょっ。それは……!」

「いじゃん、いいじゃん! 琴音ちゃんの恋バナも聞かせてよね!」



少し照れ臭そうだったけど、頷く琴音ちゃん。



「ありがとう」

「こちらこそ」



そう言って、私たちは笑い合った。

もう、私たちの間に距離は感じない。

これからは今までより深い絆になっていくことを信じたい。