特に三年生の冬に催された球技大会のときなんかは、


『奈子先輩!俺のシュート見た?ねーねー、かっこよかった?』


なんて、遠くから観戦していた私のところまで駆け寄ってきた。


サッカーの試合が終わってすぐに多くの人の前で迫ってくるもんだから。


『……別に、ずっと見てたけどふつー』


と、このときも素直に褒めることができなかった。


ほんとはいつもと違う真剣な顔とか、ゴールを決めた瞬間の弾けるような笑顔とか。


可愛い以外の蒼空くんもいるんだって思わされたけど……そんなの人前で言えるわけもない。


でも、普通だと言われたはずの蒼空くんはなぜかパァァァッと顔を輝かせると。


……ぎゅうううっと。私を強く抱き締めた。


『え?!なに?!?!』

『奈子先輩、ずっと俺のこと見ててくれたんだ!すっごく嬉しい!!』

『ちょっ、離れて……』

『次の試合も絶対見ててよ!奈子先輩に応援されたら俺めっちゃ頑張れるから!』