落ち着いて思い返してみると、蒼空くんは地頭があんまりよくないけどその分ちゃんと努力をして結果を出す子だった。


テスト勉強のときも、普段は緩んだ空気を放っているのにやるときはとことんストイックな姿勢で。
初めて見たときは別人と錯覚したほど。


受験勉強でもそれを十分に発揮して見事合格したらしい。


自分で言うのもなんだけど、私が通っている高校はわりかし偏差値が高めで入るのは難しい。


だからきっと、蒼空くんが何度もアピールしているとおりにたくさんの努力をしたんだろうなって思う。


「ね、先輩」


チワワみたいなまんまるの目でこっちを見つめてくる蒼空くん。


身長が高いのに立ち止まって私と目線を合わせるから、ほんの僅かに上目遣いになっている。
その視線を受けて、なにかが私の心臓にトスっと軽い音を立てて刺さった。


見た目はがらりと変わってしまっているけど、この可愛さは大きくなった今でも健在なんだ。


黒く艶めいた瞳に視線を吸い寄せられながらぼやっとそんなことを考える。


蒼空くんはそのまま私と視線を合わせたまま、ゆっくり息を吸い込み。


「────俺に、ごほうびをちょーだい」


瞬時には理解できないような言葉を、にこにこ笑顔で私へと放った。