「あ、蒼空くんだ」


週が明けて月曜日。つまりご褒美をあげる日。


移動教室のために友達と一年の教室の前を通っていたとき、偶然にも多くの人に囲まれる蒼空くんを見つけた。


それこそ、同級生も先輩も学年なんて関係なく、たくさんの"女の子"に囲まれている。


身長が伸びた蒼空くんは女の子の集団からにょっきり飛び出ていて。
蒼空くんはどの女の子に対しても明るく笑いかけている。楽しそうだ。


中学生の頃から見慣れている光景だけど、高校生になっても見ることになるとは思わなかったな……。


やっぱり、人気者の蒼空くんにみんなの前で話しかけるなんてできそうもない。
ここは中学時代と同じように素通りが正解かな。


と、蒼空くんから目を離そうとした瞬間、パチッと視線がかち合い。そして、


「奈子先輩っ!!おはよーございます!!」


……私の目の前まで勢いよく駆け寄ってきた。
みんなの前で飛びついてこないだけまだマシなのかもしれない。