「前世は絶対犬だよね……」

「ん?なに?」

「ううん、なんでもない」


きょとん、としてる姿もまた可愛くて。


胸がきゅんって小さく鳴った気がした。


……私の脳内、蒼空くんに対して可愛いって言葉しか思い浮かばない。


語彙力が喪失してる??


脳みそがバカになってる?危ない感じ?


それはいやだ。勉強についていけなくなるのはとっても困る。


それもこれも、蒼空くんが可愛いのが悪い。蒼空くんのせいだ。


そんな理不尽なことを思いながら何気なく左腕につけている腕時計を見ると、始業式の準備係の集合時間に間に合うかどうかギリギリの時間になっていて。


「ごめん、始業式の手伝いがあるから先に行くね」

「あっ、そうなんだ。残念……頑張って!」


慌てて一歩を踏み出したとき。


次の約束はいつにするかを決めてないことに気づく。


「来週の月曜日、楽しみにしてる」


私はそれだけ告げて蒼空くんをその場に残し、返事を聞く前に学校へ向かった。