「奈子先輩?ぼーっとしてどーしたの?体調でも悪い?」


黙った私の顔を覗き込む蒼空くんからは、ふわりと優しい柔軟剤の香りがして。


ここは夢の中じゃないことを教えてくれた。


でも、夢じゃないってことは、蒼空くんが私と同じ学校に通うのも現実ってわけで。


この先、今みたいにたまたま遭遇して話せるようになるかもしれない。


こうして親しかった後輩とまた繋がりができたのは、素直に嬉しい。


……残念なことに、それを口に出せるほど私は可愛くないんだけども。


「私のことなんて心配しなくていいから。それより、蒼空くんの学力だと受験勉強は大変だったんじゃないの?」


いろいろと嬉しいくせにそれを隠すように素っ気ない態度をとる。
だけど、そんな私の態度を気にしてないらしく、蒼空くんは相変わらず眩しい笑顔を私へ向け続けた。


「そう!俺、めちゃくちゃ頑張ったんだ〜」

「へぇ……」

「俺、すっごく頑張ったの!」

「はいはい、わかったから二回も言わなくていいよ。落ち着いて」