「ちょっ、蒼空くん!」


前はせいぜい腰に手を回して抱き着くくらいのものだったのに。


今となっては全身で私を抱き締めるみたいで、なんかちょっと違和感。


私の心臓もバクバクしている……っていやいや。


そんなことない。……ない!


密着されて苦しいんだ。暑いんだ。


だから心臓が鳴るのも早くなってるし、顔も熱くなってるんだ。


「私は優しくないから振り払うよ。離れて」

「ほんとだ!顔が赤い!保健室に行かなきゃ!!」

「そんな大袈裟なものじゃないから待って!蒼空くんのせいでしょ!」

「あ、そっか。俺がくっついたから……それにしても、最近は春って言ってもちょっと暑いよね〜」


なんて、呑気に言ってる蒼空くんは私の動揺に気づきもしない。


超能力者じゃないんだから、私の思ってることに気づかなくても当然だけど。


……だけど!


「あれ、先輩なんか怒ってる?どーして?」

「怒ってない」


私が内心ドギマギしていることに気づかない蒼空くんがなんとなく、気に食わない。