命じられたところで、すっかり忘れてしまっていたんだけど。


約束したあの瞬間。


突然、蒼空くんの雰囲気が変わったんだもん。


なにも考えられなくなっても仕方ない、よね……?


ヒントを貰ったら思い出したし、ギリギリセーフ。


私は薄情な先輩じゃない。たぶん。


「あのときの蒼空くんは可愛くなかったなぁ」

「えっ、急に悪口?酷くない?」

「悪口じゃないから泣きそうな顔しないで」

「昔は可愛がってくれてたのに……つらい」


そう言ってうなだれる姿は昔と変わらない。


ちょっとかっこよくなったかと思ったけど、中身はそう変わってないらしい。


「……そんなことより、ご褒美はなにが欲しいの?」

「ほんとにくれるの?やったー!!」


扱いやすいところも表情がころころ変わるところも、昔と同じ。なんだか胸がほっこりする。


この再会を喜んでいたのは、蒼空くんよりも私の方なのかもしれない。


「ご褒美はねー。先輩の時間が欲しいな!」

「というと?」

「毎週月曜日の放課後、先輩の時間を一時間ちょーだい」


右手の人差し指をたてた蒼空くんにそんなお願いをされた。