全てを話し終えた栗山さんは今、今なら学校中の女子を落とせるであろう、優しい顔つきの一樹の足を枕にして、すやすやと眠っている。



穏やかな空気が一帯に広がる。



だけどその中でただ1人、怜ちゃんだけが俯いていた。



気になって、俺は怜ちゃんに声をかける。



「どうしたの?」



覗き込むようにして尋ねると、そこには泣くのを必至に我慢しているような顔があった。



ハッと息を飲み、もう一度問う。



「どうしたの?」



今度は力強く、はっきりと。



「私……分かんなくなった。だって、だって私知らなかった!! 家族なのに、唯ちゃんがそんなことしてたなんて、全然知らなかったもん!! 過去の話で今はそんなんじゃないかもって思ったけど、思ったけど……今日1日、心ちゃんと過ごして、たくさん笑って、分かんなくなっちゃったんだよ、楓くん」