月下美人

廊下で話すのもあれだから、近くにあった音楽室に入った。

一応鍵もしめとこ。

陽菜
「聖七?」

陽菜は、俺に向ける視線が他と違うことにたぶん気づいてない。


「お前の言う通りだよ!俺は陽菜が嫌いだ!」

陽菜
「っ……」

俺にだけはおどおどしたり縋るような視線を向けたり弱い陽菜を見せてる。

でもそうだよ、俺は陽菜が嫌いで。


「……でも」

今にも泣きそうな陽菜の顔を上げた。


「ムカつくんだよ……陽菜見てると。嫌いで憎いはずなのに……目が放せなくて放っとけなくて、ずっと陽菜のこと考えてる」