月下美人

俺の話を真剣に聞いてくれる人なんか、翠くらいだな。

そんな、眉を下げて自分のことのように受け止めてくれて。


「治安悪い街だからよく喧嘩吹っかけられてたまたま倒した後、碧と鉢合わせて」


「碧と、幼なじみなんだもんね」


「ん。碧はその時の俺を見かねて、月下美人に連れて行ってくれた。当時の総長には良くしてもらって、そこで怜央と瑠架と聖七に会ってだんだん落ち着いて今の俺になった」

まぁ、まさか俺が総長やらされる羽目になるなんて思わなかったけど。

翠の方を見ると、涙を堪えてた。

泣くとこあったっけ……。

翠の頬に手を添えて続けた。


「近づく女なんか肩書き目当てでどうでもよかった。父さんが決めた婚約者なら仕方ないけど、でもそんな時、翠に出会った」


「っ夏希……」