「け、警察に……」


やはり、袋の中身を確認する勇気がないのか、そう呟き、背広のポケットから携帯を取り出す。


しかし、汗でベトベトになった手ではうまく持てず、携帯は音を立てて玄関に落ちた。


幸男は軽く舌打ちをし、しゃがみ込み、携帯を取ろうとしてふと動きを止めた。


さっきまで眩しいほどに光っていた袋が、ゆっくりとその光を和らげ、灰色のどこにでもある袋になった。


それと同時に、幸男の袋に対しての恐怖や違和感もゆっくりと消えていく。


袋が光を消した頃には、まるでこの袋はここにあって当然のように思えていた。


幸男は再びその袋へ手を伸ばし、今度は躊躇することなく、袋の中を覗いた。


「……あぁ」


あまりにも信じられないものを見たとき、人間は反応が鈍くなる。一旦顔を上げ、それから小首をかしげ、また袋の中身を確認する。


「あぁ!?」


幸男は袋の中に顔を突っ込み、それをマジマジと見た。


一億という札束を。