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彼女の名前は飯田カレンと言った。


「漢字で可憐ならまだわかるけど、カタカナでカレンだなんて変でしょ」


カレンはそう言いながら、ナプキンで口元を拭いた。


「そんな事ない。素敵な名前ですよ」


幸男はそう言うと、大きく二度頷いた。


「そうかしら? カレンなんて、カレンダーみたいじゃない?」


カレンの言葉に、幸男は思わず声を上げて笑った。


それにつられてカレンも笑う。


平日のホテルは人が少なく、ラウンジで昼食をとっているのも二人を入れてほんの数人だった。


「幸男さん。私でよかったら、お付き合いしてくれません?」


突然のカレンの言葉に、幸男は自分の耳を疑う。


「あの、突然だとは思います。だけど……、会った瞬間から、惹かれてたんです」


頬を赤らめ、俯き加減で言うカレンはとても愛らしかった。


たとえそれが演技であって自分の金目当ての行動であっても、幸男は男だ。


ここで断る理由なんか何一つない。


「もちろんです。僕も、惹かれてたんです」


それからは早かった。