けれど、彼女は笑顔で顔をあげ、頷いたのだ。


「いいですよ。本当に、うちは揚げ物ばかりで飽きてたんです。ちょっと待っててくださいね、準備してくるので」


そう言うと、すぐに家の中に姿を消す。


幸男はしばらくぼんやりとその様子を眺めていた。


まさか、本当に誘いに乗ってくれるなんて思ってもいなかった。


その場で小躍りしたいのを必死でこらえる。


すると、自分の手に握られて開けっ放しになった財布に気付く。


中には札束。


「準備できましたよ」


その声に顔を上げると、彼女が先ほどとは違うブルーのワンピース姿で出てきた。


後ろには見慣れた大家の姿。


「山梨さん。うちの娘、お願いしますね」


そう言うと、ペコペコ頭を下げてくる。


「はい」