「チッ」


幸男は軽く舌打をして、ふと視線を大家の家へと移した。


また、揚げ物の匂いが鼻をつく。


「こんな昼間っから脂ぎったもん食べやがって」


グチグチと文句を言っていると、家の中から女の子が姿を現した。


女の子と言っても20歳過ぎで、近くの大学に通っていると聞いたことがある。


大家の一人娘だ。


その容姿は白い肌に栗色のストレートヘア、まん丸で大きな瞳は輝いていて、薄い唇がグロスで濡れていた。


幸男はそのすべてにひきつけられていた。


一体あのゴリラのような顔をした大家から、どうやったらこんな子供が生まれるのだろうか?


その疑問ばかりが頭の中を回転する中、幸男の足はゆっくりとその子に近づいて行った。


女の子との距離、約3メートルほどのところで一旦立ち止まり、手持ちの金を確認する。


20数万円はある。