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翌日朝早くに誰かが玄関のドアをノックした。
チャイムはついているが、とっくの前に電池が切れていて使えない。
「誰だよ」
Tシャツにパンツ一丁の姿のまま、幸男は玄関を開けた。
「おはよう」
目の前に立っていた男が、ドスのきいた声で一言言った。上司だ。
「どうも」
幸男は大あくびをひとつ。
全く相手にしていない、といった様子。
「お前、自分が何をしたのかわかってるのか」
「昨日のことですか? わかってますよ」
更に寝癖だらけの頭をボリボリと掻きむしる幸男。
その態度に我慢できなくなったのか、上司が手に持っていた紙袋を幸男へつきつけた。
「そんなにやめたいなら本当にやめちまえ! お前みたいなクズ、会社にいなくても十分にやっていけるんだ!」
そう怒鳴る上司を横目に、幸男は袋の中を見る。
「なんだ、デスクのものは捨てていいって言ったじゃないですか。わざわざ持ってきてくれるなんて、ありがた迷惑ですよ」
更に幸男の口から出た言葉に、上司は目を丸くし、口をポカンと開けたまま動かなくなってしまった。
「なにしてるんです? 用事が終ったら帰ってください」
幸男はそう言うと、上司の体をおしのけ、ドアを閉めた。
ドアの向こう側から上司の怒鳴り声が聞こえたが、それを無視し、再び布団の中にもぐりこむ。
枕元には一億円。
早くも自分の人生が狂い出したことを、幸男はまだ知らない……。
翌日朝早くに誰かが玄関のドアをノックした。
チャイムはついているが、とっくの前に電池が切れていて使えない。
「誰だよ」
Tシャツにパンツ一丁の姿のまま、幸男は玄関を開けた。
「おはよう」
目の前に立っていた男が、ドスのきいた声で一言言った。上司だ。
「どうも」
幸男は大あくびをひとつ。
全く相手にしていない、といった様子。
「お前、自分が何をしたのかわかってるのか」
「昨日のことですか? わかってますよ」
更に寝癖だらけの頭をボリボリと掻きむしる幸男。
その態度に我慢できなくなったのか、上司が手に持っていた紙袋を幸男へつきつけた。
「そんなにやめたいなら本当にやめちまえ! お前みたいなクズ、会社にいなくても十分にやっていけるんだ!」
そう怒鳴る上司を横目に、幸男は袋の中を見る。
「なんだ、デスクのものは捨てていいって言ったじゃないですか。わざわざ持ってきてくれるなんて、ありがた迷惑ですよ」
更に幸男の口から出た言葉に、上司は目を丸くし、口をポカンと開けたまま動かなくなってしまった。
「なにしてるんです? 用事が終ったら帰ってください」
幸男はそう言うと、上司の体をおしのけ、ドアを閉めた。
ドアの向こう側から上司の怒鳴り声が聞こえたが、それを無視し、再び布団の中にもぐりこむ。
枕元には一億円。
早くも自分の人生が狂い出したことを、幸男はまだ知らない……。



