長雨の季節になった。

暑くなる前に夏の着物を縫い直そうと、お祖母さまと三人で針を動かしている。

晋太郎さんの淡い裏柳の地に藍鼠の縞の着物からは、ほんのりともぐさの香りがした。

「珠代さまは、どのようなお方だったのですか」

「また……。そんなこと聞いて、どうするの?」

ピンと張った糸を、義母は握りはさみでチョンと切る。

「あなたはあなたなんだから、そんなこと気にしなくていいのよ」

外には降り止まない、やさしい雨が降っている。

庭の若葉はやわらかな光と水に、ぐんと背伸びをする。

「早く子供をつくりなさい」

「……そうすれば、何か変わるのでしょうか」

「努力はしているのでしょう?」

「ほしいとは……、思っています」

「なら大丈夫よ」

仕上がった着物を畳み終え、お義母さまはどこかへ行ってしまった。

ふさぐ私にお祖母さまが口を開く。

「珠代さんは、おっとりとした優しいお方でねぇ」

深いしわに刻まれた手はからくり仕掛けのように正確に、同じ動作を繰り返す。

「従順でおとなしやかなように見えて、しっかりとしたお考えをお持ちの、芯の強い方でしたよ。晋太郎はその強さに、引かれたのかもしれませんねぇ」

ふと手を止めて、自分の縫い目を見る。

縫った糸はちぐはぐに傾いていた。

遠目には分からなくても、近くで見ればその拙さは一目で分かる。

一息にそれを引き抜いた。

「晋太郎にとってはやり直しでも、あなたにとってはそうじゃないのだから、悔いのないようにおやりなさい」

やむ気配のない雨は、やっぱり降り止まないままで、私はもう一度針に糸を通す。

縫い始めた布越しにチクリと針が指に刺さった。

にじみ出た真っ赤な血の粒を吸う。