8月25日(後編)

「それって何のお礼?この前っていつのこと?」


そう尋ねてくるケビンに首を傾げる。

覚えてないわけないよね?…

「ほら、タクシーで爆睡してたわたしを部屋まで運んでくれたじゃん。タクシー代まで払わせてごめんね」

「……」


え、なんで何も言わないの?


本気で覚えてない…?

「ケビン?覚えてないの?」

「それって…」

「な、何?」


ケビンの瞳が揺らぐのが見えた。

「……あ、うん!思い出した!大変だったよ」

そう言って笑うケビンに違和感。


なんだろう?この違和感…。


「紗良、その時の記憶…本当にないの?」

「え?あーうん…ほんとに眠かったから、あの後も死んだように朝まで寝てた」

ケビンには申し訳ないけど。


「そっか…」

小声でそう言うと、ケビンの顔つきが曇る。

「ケビン…?どうかした?」

「ううん。あ、それより、紗良の企画が雑誌に載るってすごいね」


そう言って運ばれてきたビールに口をつけるケビンから視線をそらした。