ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



「そんなの、知らない……っ」


自分の気持ちを押し殺してでも、いつでも一番に私のことを考えてる優先してくれる渚に。


胸が張り裂けそう。

胸がぎゅうってなって、苦しい。


「うん。けど、いじわるして、むぎに避けられるのだけはやだから、ほどほどにする」


ってことは……。


「……また、するの?」


「するっていうか、それはむぎが一番わかってんじゃないの?」


「は……」


「口が悪い俺、好きだろ?」


「っ!?そんなわけないでしょ!ばかっ!」


やっぱり!見透かされてる!


「だって、ふれてもないのに、囁くだけで目うるうるさせて、もっと顔赤くして。いつも以上にドキドキして、感じてんの、俺知ってるよ」


「し、知らないっ」


「嘘言うなよ。
じゃあ、今度から特訓するときはそうしようか?
手始めに今日の夜から」


「っ〜〜」


「むーぎー」


横から後ろから、のぞきこんでこようとする顔を必死に避けてたら腕が絡みついて、ぎゅうっと抱きしめられた。


「抵抗しないの?」


「……」


「はあ……好き」


「……ばか」


「そこは私も好きって言ってくれねーの?」


「っ、あ、あとで!」


「ほーん?あとで?
言ったな?絶対だよ?」


「な、なに……?」


その、悪巧みしたような顔は……?


「さっきのこと、もう無理には聞かない。けど、
むぎにはもっと俺のこと、知ってもらわないと」


「渚のことなら、知らないことはないよ?」


「っ……だから、急にかわいーこと言うの反則」


「え?」


今のどこがかわいい?


「だから不意打ちでそういうこと言われるといろいろやばいし、心臓とまるんだよ。あー、もうとにかく!」


「は、はい……」


「むぎが俺にどうされたら弱いとか、どういう仕草に弱いとか、俺は散々知ってるけど、むぎは俺のそういうの、ぜんぜん知らないだろ?」


「えっ……?
まあ、ううん?」


「なにその反応」