ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



ぶわっと顔が熱くなって、うつむく。


なにそれなにそれ。

昨日はあんなに優しかったのに、今日はものすごいいじわる。


たしかに頑なに言おうとしなかった私に非はあるけど、こんなの……!


怒りやら、羞恥やら。

もう、いろんな気持ちで頭がごちゃごちゃ。


「むぎ。こっち向いて」

「いや」


見られたくない、こんな顔。


いくらでも抵抗はできたはず。

本気で嫌がれば、渚は絶対にとまってくれる。


でもただ身を任せるがままに、キスされるのを待ってしまっていた。


キスされるのを待っていた自分も。

期待して待っていたってことに気づく自分も。


まだ付き合って1ヶ月と少しなのに、無意識に渚にぜんぶをあげてもいいって、思ってしまっていることも。


せんぶがはずかしくて、はしたないって思えて。


「かわいい顔、見せてよ」


「っ!!」


そっと横の髪を耳にかけられて、ビクッとしたら。


「最初はむぎが隠してることが純粋に気になって押し倒したけど、俺を求めてくれてるってわかって、めちゃめちゃ嬉しくて」


「……」


「暴走しそうになったから、いじわるした。
ごめんな?」


つまり、私のペースに合わせるために、激し……いや、キスしたいって思ったのを、我慢したってこと……?


っ……ああっ、もう……っ。


「さっきも言ったけど、むぎのすべてが俺のどストライクなんだよ」


ほんとに、この男は……っ。