ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。

***


「んんっ……」


今、何時……?


11、時か……。


「11時っっ!?」


やばいっ、休みだからって寝すぎたっ!

急いで体を起こしてハッとする。


そうだ、昨日からホテルにいるんだった……。


天蓋に囲まれたお姫さまみたいなベッド。


あれ、渚は……。

見れば隣に渚の姿はなくて。


そりゃあこんな時間だもん。

とっくに起きてますよね……。


「はあ……」


にしても……。

昨日の渚……なんか、王子様みたいだった……。


ふれてくる手はとびきり優しいのに、ふれたとこから伝わる熱は、やけどしそうなくらい熱くて。


いつもは涼し気なまなざしも、とっても熱っぽくて、色っぽくて。


っ……収まれ、心臓。


ぺちぺちと熱い頬を叩いても、冷えるどころか熱くなるばかり。


はああああ……。

もっと素直になりたい。


ふれてもらえてるときは、頭がぼうっとして、なにもかもを渚に預けていいって思ってしまう。


もう身も心もとけてなくなっちゃうんじゃないかってくらい。


でもそうじゃないとき。


ふだんからもっと、好きだって伝えたら渚もきっと喜ぶし、また幸せだって笑ってくれるにちがいない。


あの顔をまた見たい。

渚をもっと喜ばせたい。


そう思うのに。

どうしてもはずかしさが勝っちゃって、ついやだ、とか言っちゃう。


「はああああ……」


もういっそ、渚にすべてをあげちゃって、わけわかんなくなるまで堕ちちゃったほうが、私も素直になれるのかな……。


なんて。


「ああああ!」


寝起きにこんなっ、なに考えてるんだ私!


「どうした……?
なんかすごい声聞こえたけど」


「なぎさっ……!」