ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



昨日あのあとも。

お互いお風呂に入って、ベッドに入って、あとは寝るだけってなったとき。


『むぎ、こっちきて』

『っ、やだ、』


『なんで。俺とぎゅーしたくない?』


『そ、そういうわけじゃないけど、はずかしい、から……』


いや、じゃなくて、はずかしいだけ。

その応えに自分の頬がゆるむのがわかる。


背中を向けて、耳まで真っ赤にして、ぎゅっと丸くなる。


そのはずかしがる姿がめちゃめちゃかわいいってわかってんのかな。


なんならそのはずかしがる姿をもっとみたいなんて言ったら、どんなにかわいい反応してくれるのかって、自分の加虐的な部分がちらりと顔を出しそうになるけれど。


『約束、しただろ?』

『そう、だけど……』


『好きだから、ぎゅーしたい。
だめ?』


『ううっ……』


彼女のペースに合わせたいから。

怖がらせたくないし、やっと掴んだこの幸せを手放したくはないから。


『好き、好きだよ』

『っ、わかったから……!』


いっぱい甘やかして、俺だけにして。

欲張るのはもう少しあとでいい。


時間はたっぷりある。

なにしろ俺たちは婚約者。


朝から晩までずっとふたりきりでいられるんだし、

今はこのかわいくてたまらない大好きな彼女に、存分に「好き」を伝えたい。


そう思った俺は、もう一度むぎを見つめたあと。


「あとで、おはようのキス、してもらうからな」


そっと唇に口づけた。