ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



ただ寝ているだけなのに、好きがとまんなくて、頭ではだめだとわかっているのに、ついついふれてしまいそうになる。


「ん……」


もう一度。

今度は頬にキスを落とすと、ぴくんと震える体。


起きているときほどじゃないにしろ、寝ていても体は敏感なままなんだな……。


「つらかったな……」


むぎの抱えていた秘密は、俺が考えもしなかったもの。


俺がふれるたびに目を潤ませて、体を熱くして。


熟れた果実みたいに真っ赤で色っぽい表情も。

ぐらぐらな理性の中、俺に、俺だけにすがろうとするその手も。


俺の腕の中で、俺に感じて、とろけた顔をするのも。


あとにも先にもそんな顔を見ていいのはこの世界で俺1人で、俺しか知らない征服感と支配欲。


そして、抱える秘密のせいか、少し男が苦手なむぎの中で男は俺ただ1人で。


そして俺も、この世界の中で女の子はむぎ1人だけ。


どんなにキレイな女に話しかけられようが、どんなに彼女にそっくりな女に告白されようが。


彼女しかいらない。彼女しか見えない。


俺にとっての彼女は、はずかしがり屋でツンデレなとこもあるけど、こんな重い俺を受け入れてくれて、応えてくれるむぎただ1人。


ずっと好きだった。

ずっと恋焦がれていた。


憧れて、ふれたかった彼女が、今俺の腕の中にいる。


こんなに嬉しくて幸せで、最高なことなんかない。