「ふふっ、」
だからなんでそんな、かわいく笑ってんだよ。
「ふふっ、なぎ、さ」
俺?
「す……き、」
ほんと、勘弁して……。
思わず両手で顔を覆って、空を仰いだ。
なに、夢の中だとそんな素直になんの?
起きてるときも言ってよ。
夢に出てくるくらい俺のこと考えてるんだって嬉しさと。
夢の中の俺も、今隣にいるのも同じ俺だけど、言われてるのは、夢の中の俺だという複雑さ。
あーくそ……起こしてむちゃくちゃキスしたい。
けど我慢だ我慢。
こんなに気持ちよさそうに寝てんのに起こしちゃかわいそうだろ。
好きなだけ寝てなって言ったのは俺だし、そんなことでケンカとかぜったいしたくない。
付き合う前のケンカは、仲直りするだけ。
でも付き合ってからのケンカは、選択肢に別れるが出てくる。
いくら容姿が整ってたって、モテたって。
好きな子が離れていったんじゃ、意味ない。
やっと掴んだこの幸せを、手放さないように常に必死な俺。
もう一度。
むぎの横に転がって、今度は横から見つめる。
ほんと、なんでこんなかわいく見えんだろーな……。
つか、さっきからかわいいしか言ってねーじゃん、俺。
「なにそのにやけづら」
なんて愛しの彼女に引かれたくはないけど、
そもそもそんなこと言われないってわかってるけど。
これは、無理だろ……。