ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



「は、早く帰ろ」

「はい、待った。
どさくさに紛れて話変えない」


っ、バレてた!

笑ってたし、てっきり忘れてくれたと思ったのに!


「誰が忘れるかっての。
むしろ一番大事なことだっつーの」


「だ、大事?」

「そうだよ。
今もこれからもめちゃくちゃ大事」

「っ……!」


危なっ!


「だから、なんでそんな距離、取んの」

「な、なんとなく?」


びっっくりしたあぁぁぁ。


だって渚、いきなり顔に手、伸ばしてくるんだよ!?

なにがそんなに気に入らないのかわかんないけど、シュンとするのだけはやめて!


こっちから渚にふれたくなっちゃうから……!


「ふーん……まあ、どうしても教えてくんないんだったら、こっちにも考えあるし」


「か、考えって?」


「教えてほしい?」


「ぐっ……」


ニヤリと笑うこの顔は、絶対良くないことしか考えてないやつ。

なのに私を見下ろして、楽しくてしょうがないって感じで。


はぁ……。


敢えてなにも言わないで、あくまで主導権はこっちに握らせる。


私がこれに弱いって分かってて、わざと。

ほんとずるい。


惚れた弱みってこういうことを言うのかな。