「あ……っ、」


今にも叫び出したい衝動に駆られるのを懸命に抑えるように、声になりかかったものをグッと飲み込む。

あっぶなかった。

大声出すとこだった、まじで。


よくこらえた。
よくがんばった、俺。


ゆっくり目が開いてすぐ。

一番に口に出たのが俺の名前である喜びと、とろんとした目がふわりととけた天使さ。


顔あっつ……。


ふだんツンツンしている分、素直なとき、ぼうっとしてるときの破壊力が半端ない。


見せてくれたときのレア感以上に、ホント心臓に悪い……。

無自覚だし、かわいいだけだからいくらでも見せてくれていいんだけど、俺はいろんな意味で死にかけてる。


「今、何時……?」


「8時だよ。もう起きる?」


「んん……もうちょっと、寝てたい、」


「ん、いーよ」


声、あっま……。

かわいすぎ。

少し跳ねた前髪をなでてあげるけど、くすぐったそうに身をよじるだけ。


覆いかぶさっているし、なんなら顔だって結構近い。

起きてるときならぜったい「離れてよ!」って言うはずなのに。


「もう少ししたら、起きる、から」

「いーよ。好きなだけ寝てな」


おい、なんだその早口。


突き飛ばしもせず、離れようともせず、目を閉じたまま俺の胸に顔をうめる姿に、胸がぐわっとなって、間髪入れずに答えてしまう。


「……もっと俺のこと意識しろ、ばーか」



俺ばっかりがこんなに調子狂わされてるのが悔しくて、少し口調が悪くなってしまったけど、


「ふふっ、」


夢の中でおまえを笑顔にしてるのってだれ?

俺?それとも違うだれか?


夢に出てくるのも、いつも俺だけだったらいいのに。


ちなみに俺はいつもむぎしか出てこない。