ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



そっと私の体を放して、あーとか、はーとか。


顔を赤くして、髪をわしゃわしゃする。


前に照れたとき、手を口に当ててるって言ってたけど、これも渚のくせだ。


前髪をわしゃわしゃして、一瞬うつむくの。

でもそれはほんの一瞬だけで。


「今めっちゃ胸がギュンってなった」


「ぎゅ、ぎゅん?」


「そう。むぎがかわいすぎて、まじで息とまったの」


「だ、大丈夫、なの……?」


「ふっ、そこ聞く?けど、むぎに殺されるなら本望だなー」


「な、なにいって……」


「つか、ツンツンしてんのも、デレるのもほんと好きだしかわいいけど、デレるときはデレるって言って」


「そう、言われても……」


そんなつもりは、ないんだけど……。


「ただでさえ、我慢してるから」


「我慢?」


「そう。俺はむぎのことは傷つけたくねーの。
ゆっくりゆっくり、大事にしたいんだよ」


「っ……」


渚の顔、まだほんのり赤い。


でもそれを隠すことなく、ただ真剣な目で見つめてくるから、渚の本気とそれだけ大切にしようとしてくれてるんだって分かって、目元がグッと熱くなる。


「け、ケモノって、言われてたけど?」


「それは忘れようか」


かわいくない。


泣きそうになるとこを見られたくなくて、ツンとした返ししかできない。


でも渚は、それさえもお見通しのようで。


「な、なに?」

「んーん、なんでもない」


ただふっと笑って頭をポンポンしてくれる。


その優しさにまた胸がキュンとなって、渚が好きだなぁって思う。


「けどまあ、少しずつ慣れていってほしいから、毎日絶対イチャイチャしような」


「ま、毎日……」


「うん。それと、俺との新婚生活をはじめるにあたって約束して」