ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



なにも言ってないのに。

なにもしていないのに。


渚はますます目尻を下げて、好きだと笑って。


「体、起こしてもいい?
つーか、俺がしたすぎてやばい」


そう言って顔を赤くした渚は、また後頭部と背中に腕を回すと、ゆっくり体を起こしてくれる。


「っ、やっ、なんで、」


こんなとこ……っ。

けれど持ち上げられて乗せられたのは、


「これから毎日特訓していくけど、ぜったいここ。俺の膝の上」

「うっ、あっ……な、なぎさ」


そして正面からぎゅうっと抱きしめられた。


「大丈夫、大丈夫。
ゆっくり息すって、はいて、」


渚の声、優しい……。


密着する体と背中に回った腕。

熱く震える私の体をなだめるように、つむじにキスを落として、そのまま背中をゆっくりトントンしてくれる。


「ん、よしよし。
大丈夫、できてるよ。えらいね」


耳元で聞こえる渚の声が、子供をあやすみたいに本当に優しくて。


私から、渚の背中に手を回すことはまだできないけれど、渚にふれることができている。

それが実感できて、少しずつ心が落ちついていく。


「今日さ、」


「ん……」


「あ、待って。俺から話しといてで悪いけど、このまま少し、話せる?」


「ん、へい、き……」


「よしよし。
つらかったら、声出さなくても、うなずくだけでもいいからな?」


「ん……」