ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



生まれたときからずっと一緒のせいか、言葉がなくても、お互いの考えてることがわかることがある。


「今日、体調悪いだろ」

「な、なんで……」


「見てればわかる」


「渚さ、なにかいいことあったでしょ?」

「……なんで分かんの」


「見てればわかるよ」


体調が悪いとき。

嬉しいことや楽しいことがあったとき。


ときには、悲しいことがあったときだって。


意地っ張りな私がなにも言わなくても、渚は


「これ、むぎの好きなやつ」


敢えてなにも聞いてこなくて、でも私の好きなレモンティーを買ってきてくれて、そばにいてくれる。

クールで、女嫌いで、笑ってるとこなんて、学校じゃ見たことないのに。


「はよ。元気になった?」


ふたりのときだけ。

優しさを滲ませた穏やかな目で、私を見て、やわらかく笑って。


外見なんかじゃない。

渚のあたたかさに、優しさに惹かれたの。


もうずっと。

気づいたときにはずっと、渚のこと……。


「……なんで笑ってるの」

「べつに?」


雰囲気とかで、こうなんでしょ、と言えば。

今みたいに、世界中の甘いものをすべて煮つめたみたいな、とけた目に見つめられる。


「ばか……」

「はいはい、拗ねんなよ」


他の女の子に笑いかけることなんて、ない。


だからこそ、それが飛び上がるぐらい嬉しくて、幸せで。

渚の特別でいられる気がして。


ドキドキしてる自分が悔しい。