ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



「下ろすよ」

そっとベッドに下ろされて。


「横になろうか」


後頭部と背中に手を回されて、ゆっくりゆっくりシーツへと沈みこむ私の体。


「っ、かわいい顔……ほんと、すっげえかわいい。すきだよ」

「っ、んっ……」


頭をふわふわとなでた手が、ゆっくり頬へとすべっていく。


「体、震えてる。つらい?」

「っ、へい、き、」


「大丈夫。
むぎが俺に感じてくれてる証拠、だから。
俺の前ではもっともっと声出していいし、我慢しなくていいからな?むぎのぜんぶ、見せて」


とろりととけた声が耳を支配して、その甘さにまた体がぶるりと震える。


や、やだ、見ないで……。

こんなみっともないとこ、見られたくない。

そう思うのに。


「こっち見て。俺のこと、見て」


「好き」を滲ませた瞳が逃がしてくれない。


「ん、いい子。
俺の名前よんで?」


「なぎ、さ……」


「かわいい。もっと、」


そしてまた呼べば、「よくできました」そう言わんばかりに目尻にそっとキスが落とされて、またピクっとしてしまう。


「すきだよ、むぎ。
すっげえすき」


私も好きだよ、渚……っ。

言葉にしたいのに、身も心もいっぱいいっぱいでそれができないもどかしさに胸がぎゅっとなる。

だから……。

「っ、ん、なぎさ、」


「ん?どうした?」


「っ……」


言えない。
こんなこと、言えない。


自分からとか、はしたないって思われそうで。

キャラじゃないって思われそうで。


言えるわけない……っ。

ぐらぐらと揺れる頭の中、私の理性にストップがかかる。


「ぎゅー、したい?」


「なん、で……っ」


「分かるよ。むぎのことはなんだってわかる」